2020年夏期・振り返りワークショップレポート〜第一部:杉山学長×若新氏 トークセッション〜
2020年3月に実施するはずだった第一回・中二インターン。コロナウイルスの影響で急遽延期に……。
しかしその5ヶ月後の2020年8月、ご参画企業や中学生のご協力で、無事に「オンラインインターン」というかたちで実現することができました。
今回ご協力いただいた企業は、ABEMA、アカツキ、リクルートキャリア、デジタルハリウッド大学の4社(敬称略)。中学生たちは、この日までに各企業にZoomでインターン参加しており、最終日には総まとめとして「振り返りワーショップ」を行うため、デジタルハリウッド大学キャンパスに集まりました。その模様をお伝えします。
登壇者プロフィール
杉山知之(すぎやま ともゆき):1954年東京都生まれ。87年よりMITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動。90年国際メディア研究財団・主任研究員、93年 日本大学短期大学部専任講師を経て、94年10月 デジタルハリウッド設立。2004年日本初の株式会社立「デジタルハリウッド大学院」を開学。翌年、「デジタルハリウッド大学」を開学し、現在、同大学・大学院・スクールの学長を務めている。2011年9月、上海音楽学院(中国)との 合作学部「デジタルメディア芸術学院」を設立、同学院の初代学院長に就任。XRコンソーシアムアドバイザー、ロケーションベースVR協会監事、超教育協会評議員を務め、また福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議会長、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員など多くの委員を歴任。99年度デジタルメディア協会AMDアワード・功労賞受賞。
著書は「クール・ジャパン 世界が買いたがる日本」(祥伝社)、「クリエイター・スピリットとは何か?」※最新刊(ちくまプリマー新書)ほか。
藤川大祐(ふじかわ だいすけ):千葉大学教育学部教授(教育方法学・授業実践開発)。1965年、東京生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学(教育学修士)。金城学院大学助教授等を経て、2001年より千葉大学勤務、2010年より千葉大学教授。2010年度千葉大学学長特別補佐。2012〜2013年度、千葉大学教育学部生涯教育課程長。2015〜2017年度、千葉大学教育学部副学部長。2018年度〜、千葉大学教育学部附属中学校長。2018年10月〜、千葉大学教育学部副学部長(附属学校担当)。2016年10月〜、千葉市教育委員。
2005年、千葉大学ベストティーチャー賞を受賞。
2012年、担当した千葉大学・千葉市連携授業「西千葉子供起業塾」が経済産業省より第2回キャリア教育アワード審査委員特別賞を受賞。
2012年、理事長を務めるNPO法人企業教育研究会が、第28回学習デジタル教材コンクールで文部科学大臣賞(団体)を受賞。
ファシリテーター
第一部:杉山学長×若新氏 トークセッション
大人は案外“きっちり”していない?
若新 今日はこのデジタルハリウッド大学のキャンパスをお借りして、中二インターンの締めくくりとして最後にはみんなで集まれたらと思い、振り返りワークショップをやりたいと思います。杉山先生、こんなぜいたくな部屋をご用意いただいてありがとうございます。
杉山 いえ、とんでもないです。よろしくお願いします。
若新 みなさん、いろいろなインターンに行かれたと思いますが、楽しかったですか? たぶん、最初はどんなプログラムか全然分からなかったと思うんですけど、どうでした?
中学生 すごく自由で、のびのびとしていて、それぞれの人が自信を持ってる感じがしました。
若新 なるほどね。人とは違うけど自信を持ってる大人もいるんだ、みたいなね。
(ほかの中学生を指して)どうだった?
中学生 良かったです。案外、きっちりしてない人が多かった。
若新 いいこと言うね、もう最高。今日これで解散でもいいくらい(笑)。今回の中二インターンでは、いまみんなに言ってもらったようなことを感じてほしかったんだよね。
インターンをする前は、やっぱり大人って“きっちり”してないといけないと思ってた?
中学生 働くためには、やっぱりある程度そういうのもないといけないのかなと。
若新 杉山先生、どうなんですかね。
杉山 僕もいろんな会社を見てきたけど、会社員って、一応頑張ってちゃんと仕事する人が多いんです。でも、みんなが感じたように、いろんな人がいます。きっちりしてなくて自由な人もいるし、この人は本当に会社員なのかなっていう人たちもいるかもしれないし。
若新 今回は、世の中的にもみんなが入社したいと思うような人気の会社に参加してもらいました。だからといって、そういう人たちが全員“きっちり”しているかというと、そうじゃなかったと思います。
だけど、あの人たちは“きっちり”してないところもあるけど、いい加減で頑張っていないわけではないんですよね。“きっちりしている”ことと“頑張っている”ことは、一緒ではないんですよ。正しい答えをきっちり出せるわけじゃないんだけど、自分で自由に考えて、正解を探しながら仕事をしている大人たちもいる。
杉山 そうですね。どこかの部分では「プロ中のプロ」みたいなこともあると思いますけどね。
若新 杉山さんだって、大学の学長なんですよ。
杉山 (自分の髪を指して)髪の毛が長くてもなれるよ。(若新さんを指して)髪の毛染めててもなれるよ(笑)。昔はもうちょっと違って、大学の先生ってきっちりしてたんだよ。
才能に気づくには、疑問を持つ、たくさんの大人に会う
若新 中二インターンの大きなテーマは「みんなの才能に気づいてもらう」ってことなんだけど、そのためにみなさんには事前に「人と違っていい」「自由に考える」「正解はない」っていう3つを伝えていました。インターンをやってみて、このことがなんとなく分かりましたか?
「“きっちり”してなくてもいい」っていうのは、まさにこういうことかもしれないよね。
でも藤川先生、基本的に中学校は、中学生に“きっちり”することを求めてますよね。世の中ではきっちりしてない大人が活躍してるのに、なんで中学生にはきっちりを求めるんですかね?
藤川 なんででしょうね。私はゆるくてもいいと思ってるんですけど(笑)。
きっちりしてないままにしておいて、何かあったら嫌だからだと思います。きっちりやっていたのに問題が起きたのであれば仕方がないかもしれないけど、きっちりやっていないのを放っておいて、例えば、寝坊するとか服装が乱れてるとか、そういうことを何も指導しなかったら、学校は怠慢だって言われるんじゃないですかね。
若新 なるほど。じゃあ学校は「ちゃんと生徒を指導してるんですよ」って言うために、きっちりやってますよ、と。
藤川 多くの人は、きっちりしたほうがいいと信じているんですよね。
若新 「きっちりやんなきゃ」って思いすぎていると、みんなの才能が見つかりにくいんじゃないかと思っていて。それは大事なことの1つなんですね。そういうことを言葉で説明しても難しいと思ったので、いろんな企業に来てもらいました。今回のインターンの中でどこがおもしろかったですか?
中学生 僕的にはABEMAさんが一番おもしろかったです。番組企画を考えることを通じて、いま何に対して疑問に思ってるんだろうってもう1回考え直して、自分や世間をもう1回見つめ直せたのが、おもしろかったなと思います。
若新 なるほど。番組企画を作るっていう体験だったけど、番組をどう作るかっていうことじゃなくて、自分が何を思ってるか、世の中をどう見てるかを、自分で1回整理するのがおもしろかったと。すごい、おもしろいね。
でも、そんなことがおもしろくなってしまったら、来週からの学校生活が心配だなあ。
会場 (笑)
中学生 そうですよね。
僕はもう、それを体験してもらえただけでめちゃくちゃうれしいんだけど、それを来週からの中学校生活でもできるかっていうと、ほとんどの場合、中学生が疑問を持つと学校は困るんですよね。
ちなみにデジタルハリウッド大学では「自分が疑問を持つ」ことを、入学したときからみんながどんどんやるんですか?
杉山 入学したら「そういうこと(疑問を持つこと)が大切だよ」と伝えるんですけど、本当に信用してもらって、少なくともこの場では、言いたいことを言って、やりたいことをやって、何をしても安全なんだって思ってもらうのに、最初は3ヶ月くらいかかるんですよね。
若新 先生、それ僕がいつもいろんなところでやっているプロジェクトと同じで、やっぱり3ヶ月くらいかかるんですよ。みんなにも聞いてみたいのが、「自由に言ってもいい」って言われても、最初はやっぱり自由に言うのって不安だと思った?
中学生 なんて言ったらいいか困りました。
若新 なるほどね。いきなり言われても「自由にものを言うってどういうことなんだろう」って、最初はちょっと分かんないんですよね。どの瞬間に、自由に言ってもいいんだって思った? 「自由に言うってこういうことか!」みたいな。
中学生 今回のこれ(中二インターン)もそうですし、そういう大人に会って初めて分かると思います。いつもとは全然違うタイプの大人に会ったので。
若新 なるほどね。それはやっぱりそういう大人に会わないと分からないわけね。
学校の先生が悪いわけじゃないんだけど、問題なのは、中学生が会う大人は親と学校の先生だけじゃないですか。藤川先生、これからは学校の先生以外にも大人がいるっていうことをどんどん知っていかなきゃいけないですよね。
藤川 もうね、本当にやんなきゃダメですよね。
若新 じゃあ、みんなの感想が聞けたところで。ありがとうございました、最高です。
インターンを楽しんでもらったことだけでも十分なんだけど、今回みんなには結構難しいことをお願いしても頑張ってくれるんじゃないかなって勝手に期待してて。せっかくだから、この後もうちょっと深く考えてもらいたいなと思っています。