「個性」を発掘!思春期を解き放て 〜中二インターン×千葉県船橋市立中学校 振り返りワークショップ編②〜

後半は3人でのグループワークです。先ほど中学生たちが自分で書き出した個性に対して、ほかの2人が肩書を考えてカードに記入し、その後「なぜその肩書にしたのか」についてインタビューしました。

さらにここから、デジタルハリウッド大学の杉山知之学長にご登壇いただき、生徒の個性と肩書が書かれたカードの内容を踏まえ、みんなでディスカッションしていきます。

生徒が考えている間、先生同士でも肩書を即興で考えていただきました。ある先生の考えた「笑顔を振りまく女神」が会場の笑いを誘います。

みんながカードを書き終えたあと、若新さんと杉山学長がカードをピックアップしながら、内容について問いかけていきました。

◎宮下さん

■個性:嫌いなのは頑張れない人
■肩書:C組のピカソ

若新:C組のピカソって言われて、どう?

宮下さん:自分は絵を描くことが好きなので、うれしいです。

若新:中学校の頃から嫌いなことを分かっておけば、就職するときにそれを避けられるじゃないですか。そのためにも嫌いなことを分かっておくのは大切ですよね。先生の周りにも、嫌いなことを頑張れない人は多いんじゃないですか? 

杉山:嫌いなことを頑張れないことは美しいんですよ。嫌いなことを頑張って、60歳で「自分は嫌いなことやってきたな」って思うのは嫌じゃないですか。嫌いなことを頑張れないのは普通ですよね。

杉山知之学長

◎宇佐美さん

■個性:漫画・アニメ・声優さんが好き
■肩書:編集の天才

若新:編集ってすごいね。何を編集してるんですか?

宇佐美さん:好きなアニメとか漫画とかを組み合わせて、音楽を合わせたりしてます。

若新:先生、いまの高校や大学の入試では編集の力は問われないじゃないですか。それに、昔は編集の仕事なんてごくわずかしかなかったのに、いまはいっぱい求められていますよね。なぜなんですか?

杉山:あ、うちの大学は作品のポートフォリオを出すからOKですよ。

いまはプロのYouTuberがいるじゃないですか。撮影する以外に、編集してテロップ入れたりするのは別の人がやることが多いんですよね。編集だけで飯食えている人がたくさんいるんです。

今後はそういう大学がどんどん増えますよ。今回のコロナで「世の中、たしかに変わるんだな」って思った人が多くて、入試もどんどん変わると思います。

宇佐美さん:気軽に編集して遊んでただけなのに、いろいろ言ってもらえてうれしいなと思います。

若新:いま言ってくれたように、気軽にやってただけなのに友達に言われて気づいたじゃん。それが、藤川先生が言っていた“リフレクション”なんですよ。友達に見せたり聞かせたりしたら自分が知らなかった自分を教えてもらえた、みたいな。いろんな人に話してみるのが大事なんだと思いますね。

◎高橋さん

■個性:自転車が好き、靴が好き
■肩書:協力家

若新:自分って協力する人だと思ってた?

高橋さん:そういう実感はあんまりないです。

若新:協力家って書いてくれた友達に、なんでそう書いたのか聞いてみたい。

肩書を書いた林さん:みんなのことをよく手伝っていて、すごい協力家なんだなと思います。

若新:「自分って協力してたんだ」って自分では気づいてなかった場合と、気づいてたけど「自分にとっては大事じゃなかった」っていう場合があると思うんです。ここで大事なのは、どっちにしても自分は人からいろんな見られ方をしていて、それが“自分は普通とはどう違うか”っていう気づきだってことですよね。

◎伊達さん

■個性:暗い人、ボソボソ話してる人、情緒不安定な人
■肩書:小さなことに気づく天使

若新:天使って言うくらいだから、相当天使レベルで小さなことに気づいてると思うんだけど、自分で自分を“小さなことに気づく人”だって思ってました?

伊達さん:思ってません。

若新:書いてくれた友達は(どうしてそう思ったの)?

肩書を書いた小林さん:給食の袋を知らない間に畳んでくれたり、配るものとかをすぐ気づいてやってくれたり、かわいいので天使かなと思いました。

若新:先生、そういう自分のいいところって、自分じゃ気づかないことが多いですよね。

杉山:気づかないですよね。だから、肩書をみんなに考えてもらうのは素晴らしいと思いますよ。いくつも考えてもらって、気に入ったのを名乗るようにすればいいんですよ。

◎塩澤さん

■個性:つまらない人、周りの意見に合わせる人
■肩書:塩じゃない対応

若新:先に「塩じゃない対応」って書いてくれた人の方から聞いてみようかな。なんでこう書いたの?

肩書を書いた西村さん:やさしいからです。

若新:説明するのって難しいかもしれないけど、普段だったら塩対応されるようなことも、ていねいに答えてくれるってことなのかなと思ったんだけど。あ、そっか。塩澤さんだから、名前にかけてるってこと?

西村さん:そうです。

塩澤さん:最初は意味がよく分かんなかったんですけど、聞いてみたらそう思われてるんだなって思いました。

若新:これすごく大事なことだと思うんだけど、人間っていうのは誰かとの関わりの中で生きているんですよね。

先生、自分ができるばっかりじゃなくて、誰かにいい対応をしてあげられる人も必要じゃないですか。デジタルハリウッド大学には、絵がうまいとか音楽を作れるとか、自分で創作している人がいっぱい集まっていると思うんですけど、いい対応ができる人も活躍してるんですか?

杉山:ものすごく活躍してますね。いい対応をする人は、とんでもなく個性的な人のまとめ役になることが多いんですよ。監督になったりプロデューサーになるんです。

若新:なんでこれをわざわざ中学2年生のみなさんとやりたかったかというと、僕は「自分は普通じゃないんじゃないか」と考えるようになるのが、その頃からだと思っているんです。しかも、そう思っているのは自分だけじゃないんですよね。結構みんないろいろ思っていて、それもバラバラなんです。

みなさんの中学校では、生徒300人に対して先生が25人だから、全員のバラバラを見るのは不可能なんですよね。だから先生たちは、みんなにとってこれは絶対必要だよっていうこととか“普通”をやってくれるんですよね。

普通になる必要はないけど、中学校で普通を知った上で、普通と比べて自分はどんなものを持っているのかを、中学校生活を送りながら考えてもらえるといいんじゃないかなと思います。

最後に、杉山学長から中学生たちにメッセージをいただきました。

杉山:今日の話でも出てきたんだけど、例えば「自分は人に対してやさしくしてあげてるんだ」と思ってるとするじゃない? だけど、それを相手がどう受け取っているかは、聞いてみないと分かんないんだよね。だから、なるべく信頼のおける友達を作って、話し合ってみるのがいいんじゃないかな。そこで「おかしい」とか「素晴らしい」とか、どう評価されてもいいのよ。ただ考えるきっかけにしてもらって、「自分は変なんじゃないか」とか思わない方がいいと思うんですよ。

中学校では、世の中の「真ん中」や「普通」を教え込まれるけど、それは「そういうもんなんだ」というだけで、普通になれっていう話じゃないんですよ。普通になる必要はまったくないんですよね。だって、みんなが同じ答えを出したら、仕事をその人に頼む意味がないじゃないですか。同じものを作るのは人工知能がやればいいわけよ。個性があるから、お金がもらえるんですよ。

いつも言っているんだけど、普通を知るっていうことは、基準を知ることでもあるわけですよね。それで自分のことを探究すると、普通と自分との距離やベクトルが分かる。それを認識すると、世の中のことが分かりやすくなると思います。

若新:最後にみなさんにお伝えしておきたいのは、「人生はゲームだと思えばいい」ってことなんですよね。いまはいろんな選択肢があるし、やり直しができる時代なんですよ。ゲームだからこそ、自分にぴったり合えばおもしろいし、合わなかったら別のゲームに変えられる。そんな時代が日本にも来たなって僕は思っているので、今日、それがみなさんにちょっとでも伝わったらいいなと思います。

今日の藤川先生と杉山先生の話を聞いて、中学校は普通を知る大事なゲームの場なんだと思いました。世の中に出ていく際に普通を知っておくことはめっちゃ大事だから、“普通ゲーム”はいったん頑張ったほうがいいと思うんですけど、負けたとしても本当の意味で負けているわけじゃないんで、別のゲームで頑張ろうと思ってもらえればいいと思います。人生何回でもリセットできるんで、みなさんそうやって人生を楽しんでもらえたらいいなと思いました。

今回、個性と肩書のカードで、自分を深掘りした中学生たち。「中学校は、みんなが必ずやっておいた方がいいことをやっておく場所。でもそのことを知った上で、普通からどんどん外れていい」という、藤川先生や杉山学長からのメッセージを受け、将来に向けて自分の個性をどう解き放っていっていくのでしょうか。

これで、「中二インターン×千葉県船橋市立中学校」の全プログラムは終了。今後もまだまだ、中学生たちとの実験は続きます。

次回開催予定については、こちらからご確認ください。

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